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2026.05.28

伝統と挑戦で守る、伊平屋島の泡盛「照島」

創業70年以上、地域に親しまれてきた伊平屋島伝統の泡盛「照島」

70余年続く、伊平屋酒造の代表銘柄「照島」

沖縄県伊平屋村に位置する伊平屋酒造は、創業から70年以上の歴史を刻んできました。この酒造所を代表する銘柄が、泡盛「照島(てるしま)」です。その味わいは、長年にわたり守られてきた伊平屋の酒造りの伝統を象徴しており、島における泡盛の「基準」とも呼べる一本として親しまれています。

「照島」という名称の由来については、島に伝わる物語が背景にあります。伊平屋島には天照大神(あまてらすおおみかみ)の天の岩戸伝説があり、その「照」の文字を取ったという説や、かつて首里から招かれた杜氏(とうじ)・島袋氏の「島」と天照大神の「照」を合わせたという説が語り継がれています。こうした由来からも分かる通り、「照島」は土地の記憶と先人の努力を体現するブランドです。

その製造過程には、約1ヶ月に及ぶ緻密な工程が積み重ねられています。

「一回の仕込みはタイ米が500kg、長粒米だと400kgという風に分けてやっています」と語るのは、息子の保久村貴洋さんです。まず、回転式ドラムで洗米を行い、お米を水に浸す「浸漬(しんせき)」という作業をタイ米の場合で約30分行います。その後、ボイラーを用いて100度の蒸気で約50分かけて米を蒸し上げ、泡盛の要である黒麹菌をまぶします。

ここから、黒麹菌を発酵させる「製麹(せいきく)」の工程に入ります。通常は48時間から72時間、長い場合には96時間をかけてじっくりと仕込みます。製麹の仕上がりを確認した後、仕込みタンクへと移し、さらに20日から30日かけてゆっくりと発酵を進めます。最終的に試験蒸留でアルコール度数を測定し、基準に達した段階で単式蒸留器へ移して蒸留を行うことで、ようやく泡盛が完成します。

工場には、職人たちが緻密に管理するタンクが所狭しと並んでいる

伊平屋島の風土が育む、安定した酒造りの背景

伊平屋島という土地そのものが、良質な泡盛を造り続けるための大きな支えとなっています。島内は山が多く、起伏に富んだ地形が特徴ですが、伊平屋酒造はその島の中ほどに位置しています。この立地条件により、周囲の山々が天然の防風壁として機能し、沖縄特有の台風被害を比較的受けにくいという環境が生まれています。この恵まれた地形こそが、年間を通じて安定した酒造りを可能にする重要な要因です。

また、季節ごとの気候の変化も、泡盛の個性を形作る要素の一つです。気温の低い冬場は発酵の進行が夏場に比べて緩やかになるため、あえて発酵期間を長く設けるといった調整が行われます。保久村さんら職人は、日々の状態を細かく観察しながら作業を進めます。このように冬の寒さを活かしてじっくりと時間をかけて造られた泡盛は、まろやかで深みのある味わいに仕上がると言われており、通な飲み手たちからも高く評価されています。

息子の葛藤と、地元産米による新たな可能性への挑戦

現在、蔵を支える息子・保久村貴洋さんが島に戻り、酒造りを始めたのは約6年前のことです。それ以来、先代である父親の背中を見ながら技術を習得してきました。

「細かいやり方をはっきりと教えてくれる人ではなく、自分なりに解釈して酒造りをやっていました」と振り返るように、マニュアルに頼るのではなく、日々の研鑽を通じて一つひとつの工程を体得してきました。

息子として伝統を継ぐことには、大きなプレッシャーと語る保久村さん

「祖父、父親がやってきたものと同じものを作ろうという努力、その過程がとても難しいです。酒造りは培ってきた経験が活きることが多いこともあり、祖父や父の味にいかに近づけるのかが、今はまだ難しいです」

こうした伝統への敬意を持ちつつ、保久村さんは地元・伊平屋産のお米を使った新しい泡盛造りにも果敢に挑戦しています。沖縄県内でも数少ない米どころとして知られる伊平屋島で収穫された米を使い、4〜5年前から開発を進めてきました。

しかし、主力製品であるタイ米での醸造法をそのまま応用することはできませんでした。特にジャポニカ米を用いた製造には、特有の難しさがあります。

「慣れたタイ米ですと造りやすいですが、伊平屋産のジャポニカ米で造る泡盛は、製麹(せいきく)が難しいです。お米の水分量が多いので、浸漬時間の調整がとても難しいですね」

保久村さんは、過去に大きな失敗も経験しています。

「初めて県産長粒米で試みた際、タイ米と同じ時間の浸漬をしたことがあって。タイ米と同じようなやり方でやると、べちゃっとした団子状に出来上がってしまったことがありました」

こうした失敗を糧に、現在は培ってきた感覚を頼りに独自の調整を行っています。

「タイ米ならこの時間だから、伊平屋産長粒米ならこういう風に、とやってきた経験を基に調整しています」デーータや数値だけに頼るのではなく、職人としての勘を信じ、引き算の発想で微調整を繰り返すことで、伊平屋産米ならではの味を引き出すことに成功しました。

職人たちの優れた勘と試行錯誤の結晶「照島」

伊平屋村の産業への貢献と、地域に根ざした未来

伊平屋酒造の活動は、単なる酒造りにとどまらず、伊平屋村全体の産業活性化に寄与しています。特に地元産米を使用した「しまぐみ」や「てるしの島」といった製品ラインナップは、地域の農産物に付加価値を与え、島外へ魅力を発信する重要な役割を担っています。

「しまぐみ」は泡盛を飲み慣れていない方にも親しみやすいまろやかさを備え、「てるしの島」はお米の風味が強くありつつも、すっきりとした後味が特徴です。これらの製品により、これまで泡盛に馴染みがなかった層や若い世代へのアプローチが可能となりました。保久村さん自身も、多様な楽しみ方を提案しています。

「炭酸が好きなので、どの泡盛も炭酸割りで飲むことが多いです」
「年配の方ですと、氷は入れずストレートで味を楽しむという方もいます。色々な割り方もあるので、自分の好きなジュースで割って飲んでもいいですし、自分の好きな飲み方を探していただくのも楽しみ方の1つになると思います」

また、島の人々との密接な関わりも、酒造りを続ける大きな動機となっています。

「島での生活は村民の方々と関わる機会が多いので、直接消費者の方から美味しいという声を聞けることが一番嬉しいです。ただ、歴史が長い分、前と味が違うよと言われることもあり、賛否の声があるのも事実です。ですが、美味しいと言って楽しみにしてくださる方々の為にも、頑張りたいですね」

様々な楽しみ方で照島を味わってほしいと語る保久村さん

地域に根ざし、島の人々の生活や祭事に深く入り込んでいるからこそ、その責任の重さと喜びを同時に感じているのです。保久村さんは今後の展望について、地に足の着いた姿勢を見せます。

「まだまだ日々勉強しながらですが、まずは安定して酒造りを出来ることが一番かなと思います。周りの方々からもサポートをしていただいているので、その期待に応えられるような酒造りを続けていきたいと思います」

伝統の「照島」を守り抜き、かつ地元の素材を活かした新たな価値を創出することで、伊平屋村の産業を支え続ける。伊平屋酒造の挑戦は、これからも島の未来と共に続いていきます。

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